# SPEC-KIJUN v0.1 — 基準外国為替相場の復元仕様 為替介入研究所 | 起草 2026-08-10 | 会則第8条一号・第19条・第24条・第27条準拠 | 参照 METHOD-v1.0 --- ## 1. 目的 外国為替資金特別会計の資産評価および外国為替等の売買損益算定に用いられる**基準外国為替相場**を、公示前に決定論的に復元し、公示後に照合するための仕様を固定する。 本仕様は単独で成立する測定規則であり、これを利用する研究(WP-004 等)の結論には依存しない。依存関係は **SPEC-KIJUN → 利用研究** の一方向とする。 **本仕様はアルゴリズムのみを固定する。** 個別月の復元値・予測値・公示値は `data/kijun/kijun_usdjpy.csv`(§8)に置き、本仕様には記載しない。月次更新のたびに本仕様を改版しない。 --- ## 2. 制度の根拠 ### 2.1 現行の算式〔FACT・一次資料〕 外国為替資金特別会計財務書類 注記⑸③(令和4・5・6年度の各年度に同文)は、告示の該当部分を逐語で掲載している。 > 「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場を定める件」 > ア 基準外国為替相場 アメリカ合衆国通貨 > **当該月の前々月中における実勢相場の平均値**として財務大臣が日本銀行本店において公示する相場 | # | 根拠 | 内容 | |---|---|---| | 1 | 外国為替及び外国貿易法 第7条第1項 | 財務大臣は基準外国為替相場および裁定外国為替相場を定め、告示する | | 2 | 基準外国為替相場及び裁定外国為替相場を定める件(昭和24年12月大蔵省告示第970号) | 上記のとおり | | 3 | 特別会計に関する法律 第79条第1項 | 外国為替資金に属する外国為替等の価額は、上記相場により改定する | | 4 | 特別会計に関する法律施行令 第46条第2項第1号 | 売買損益は「当該売却時における外国為替相場」による換算価額との差額で認識する | ### 2.2 算式の変遷〔SECONDARY-SOURCED / primary source pending〕 | 期間 | 決定方式 | 根拠告示 | |---|---|---| | 昭和24年12月〜昭和46年 | 1米ドル=360円で固定 | 昭和24年大蔵省告示第970号 | | 昭和46年12月〜昭和53年 | 1米ドル=308円 | 昭和46年12月19日大蔵省告示第134号 | | 昭和53年〜平成21年12月 | 半年ごとに、それ以前の半年間の相場を基に決定 | 昭和52年12月17日大蔵省告示第119号 | | 平成22年1月〜現在 | 当該月の前々月中における実勢相場の平均値 | 平成21年7月17日財務省告示第248号 | **出所は参議院常任委員会調査室『経済のプリズム』No.129(2014年9月、藤井亮二)であり、二次資料である。** 各改正告示の原文は本調査では取得できなかった(昭和期の官報は公開データベースに存在しない)。 **この表は本仕様の適用範囲(§3)の画定にのみ用い、事実認定には用いない。** 現行算式(§2.1)は財務省一次資料により独立に確認されており、本表が誤っていても現行算式の認定は揺るがない。 --- ## 3. 適用範囲 本仕様による復元は、**平成22年(2010年)1月適用分以降**に限る。それ以前は算式が異なるとされるため(§2.2)適用しない。 裁定外国為替相場(米ドル以外)は「財務大臣が日本銀行本店において公示する相場」とのみ規定され、算式が公表されていないため、**復元の対象外**とする。取得は公示値のみによる。 --- ## 4. 復元手続き 適用月 `M` の基準外国為替相場 `B(M)` を次により算出する。 ``` 参照月 R = M − 2 か月 x = mean( close(d) ) d ∈ { R の全営業日 } B(M) = floor( x + 0.5 ) ``` - `close(d)`:正準価格系列(§9)の日足終値 - `mean`:算術平均(営業日の単純平均。加重しない) - 計算は未丸め値で行い、表示のみ丸める(METHOD-v1.0 第七項) > **丸めの実装上の注意** > `floor(x + 0.5)` を仕様とする。Python の組込み `round()` は ties-to-even(銀行家丸め)であり、`round(146.5) == 146` となって本仕様と一致しない。実装では `math.floor(x + 0.5)` または `Decimal` の `ROUND_HALF_UP` を用いること。為替相場は常に正であるため、この定義で足りる。 > **丸め規則の格〔CALIBRATED METHOD〕** > 本規則は制度上の内部処理を確認したものではない。候補規則のうち、四捨五入が18公示値中17件を再現し最も高い再現率を示したため、**本仕様の運用規則として採用する**(切上げ8/18、切捨て10/18)。 > 確認されたのは「OANDA終値の単純平均を1円単位で四捨五入すると公示値の大部分を再現できる」という復元アルゴリズムの較正性能であって、政府が実際に四捨五入しているという制度的事実ではない。 --- ## 5. 較正結果〔CONFIRMED・2026-08-10 実施〕 | 適用月 | 参照月 | 参照月平均 | 復元 | 公示 | 差 | 公示値の出所 | |---|---|---|---|---|---|---| | 2022-06 | 2022-04 | 126.425 | 126 | 126 | 0 | 日銀 | | 2022-11 | 2022-09 | 143.223 | 143 | 143 | 0 | 日銀 | | 2023-01 | 2022-11 | 142.060 | 142 | 142 | 0 | 日銀 | | 2023-02 | 2022-12 | 134.999 | 135 | 135 | 0 | 日銀 | | 2023-03 | 2023-01 | 130.375 | 130 | 130 | 0 | 令和4年度財務書類 | | 2023-12 | 2023-10 | 149.605 | 150 | 150 | 0 | 日銀 | | **2024-03** | 2024-01 | 146.303 | **146** | **147** | **−1** | 令和5年度財務書類 | | 2024-08 | 2024-06 | 157.950 | 158 | 158 | 0 | 日銀 | | 2024-12 | 2024-10 | 149.931 | 150 | 150 | 0 | 日銀 | | 2025-03 | 2025-01 | 156.484 | 156 | 156 | 0 | 令和6年度財務書類 | | 2025-06 | 2025-04 | 144.286 | 144 | 144 | 0 | 日銀 | | 2025-11 | 2025-09 | 147.899 | 148 | 148 | 0 | 日銀 | | 2025-12 | 2025-10 | 151.449 | 151 | 151 | 0 | 日銀 | | 2026-01 | 2025-11 | 155.222 | 155 | 155 | 0 | 日銀 | | 2026-05 | 2026-03 | 158.695 | 159 | 159 | 0 | 日銀 kiju2605 | | 2026-06 | 2026-04 | 159.185 | 159 | 159 | 0 | 日銀 | | 2026-07 | 2026-05 | 158.260 | 158 | 158 | 0 | 日銀 | | 2026-08 | 2026-06 | 160.847 | 161 | 161 | 0 | 日銀 | **一致 17/18。平均誤差 −0.056円、最大絶対誤差 1円。** ### 5.1 不一致事例の原因〔HYPOTHESIS〕 令和6年3月適用分は、参照月平均146.303に対し公示値147円であった。丸め規則の誤りではない(切上げを採用すると2022年4月分等が破綻する)。 **告示は「実勢相場」の建値・時点・情報源を定義していない。** 一方、税関は関税定率法系の公示相場について次のように明示している。 > アメリカ合衆国通貨の場合、本邦の外国為替市場における**銀行間の直物取引(翌々営業日渡し)の中心相場**の前々週における週間の平均値 (税関「外国為替相場(課税価格の換算)」/関税定率法第4条の7、同法施行規則第1条、基本通達4の7-1) 基準外国為替相場の「実勢相場」も同種——**東京市場の銀行間直物中心相場**——である可能性が高い。本仕様が用いるOANDA日足終値はNY市場引け基準であり、体系が異なる。境界値(.3〜.7)の月では丸めが反転しうる。 **検証経路(v0.2 で実施予定)**:日本銀行「外国為替市況(日次)」または時系列統計データ検索サイトの東京市場ドル・円中心相場を代替参照系列として同一較正を行い、再現率を比較する。改善すれば正準参照系列を差し替える。 --- ## 6. 誤差の扱いと優先順位 1. **公示値が常に正である。** 復元値は公示前の予測、および公示値が未取得の月の補完にのみ用いる。 2. 復元値を研究で用いる場合、**±1円の不確実性**を明示する。この幅は §5 の実測最大絶対誤差に基づく。 3. 復元値と公示値が食い違った場合、公示値を採用し、不一致を本仕様の改訂履歴に記録する(会則第17条)。 4. 復元値には必ず `【復元値】` を付し、公示値と混在させない。 --- ## 7. 公示日と予測の運用 **公示日**〔CONFIRMED・実測〕:適用月の前月**17日〜20日頃**。実測例——令和8年5月分=2026-04-20、6月分=2026-05-20、7月分=2026-06-19、8月分=2026-07-17。 **予測の手続き** 1. 参照月の全営業日が確定した時点で `B(M)` を算出し、CSV に `reconstructed` として記録する 2. 参照月が未了の段階では暫定値とし、`provisional` フラグを立てる 3. 公示後、`published` 列を埋め、`diff` を再計算する > **事前登録性について** > 復元値の事前性は、本仕様ではなく **CSV のコミット時刻と OpenTimestamps 刻印**によって担保される。予測を事前登録として扱う場合は、公示日より前にコミットし刻印すること(会則第23条)。 --- ## 8. 出力形式 ``` data/kijun/kijun_usdjpy.csv apply_month, reference_month, reference_mean, reconstructed, provisional, published, diff, published_source, published_url, retrieved_at ``` - `retrieved_at` は JST・ISO 8601(+09:00)(METHOD-v1.0 第一項) - 公示値未取得の月は `published` を空欄とし、推定補完しない(会則第15条) --- ## 9. 実装と来歴 **正準価格系列**:`OANDA_USDJPY_1D.csv`(2002-05-06〜2026-08-07、6,300営業日) **SHA-256**:`1fdae032f3f95f9cb9dbcdb30f3dd80cc2163142be767bc6f278d50697e2879b` 原系列は再配布不可のため、取得条件とハッシュにより同一性を担保する(WP-001 と同一の運用)。 **公示値の取得**:日本銀行「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場一覧」の各月ページ(`kijun/kiju[YYMM].htm`)。財務書類の注記に記載された年度末値も一次資料として採用する。 > **取得経路に関する記録**〔観測・2026-08-10〕 > e-Gov法令検索(`laws.e-gov.go.jp`)の法令ページについて、**当研究所の raw HTTP 取得経路では本文を取得できなかった**(メタ情報のみが返り、条文本体が空であった)。法令ページ自体は存在し、検索エンジン経由では内容を参照できる。 > これはサービス一般の性質ではなく、当研究所の取得手段における制約の記録である。法令原文の自動監視を設計する場合、代替経路(厚生労働省法令データベース等)または手動取得を併用すること。 --- ## 10. 限界 - 告示の「実勢相場」の定義(建値・時点・情報源)は公表されておらず、本仕様は**近似**である。17/18の一致は妥当性を支持するが、証明ではない(§5.1)。 - 丸め規則は較正により選択したものであり、制度上の内部処理ではない(§4)。 - 参照月の営業日集合はOANDA系列の存在日に依存する。国内祝日は算入する(METHOD-v1.0 第一項)。 - 平成21年12月以前には適用できない。適用開始時点の根拠は二次資料による(§2.2)。 - 裁定外国為替相場は復元できない。 - 施行令第48条により、財務大臣の定める取引については価額改定の例外がありうる。その範囲は公表資料から確認できない。 --- ## 11. 依存関係 ``` SPEC-KIJUN ──→ WP-004(介入執行レートの識別可能性) ──→ 参照レート検証ノート(「140円台→156円」主張の検証) ──→ エピソードDBの簿価列 ``` **一方向。** 利用研究の結論が変わっても本仕様は影響を受けない。 --- ## 12. 直ちに要する訂正(他成果への波及) 『日本政府の参照為替レート検証』ノート Key Finding 5「『156円』ちょうどの月は、確認できた基準相場のどの月にも存在しなかった(CONFIRMED)」は、**令和7年3月適用分=156円**(令和6年度外国為替資金特別会計財務書類 注記⑸③)により訂正を要する。 ただし同ノートの中心的結論——基準相場は前々月実勢平均の機械的帰結であり、財務大臣が水準を裁量設定する制度ではない——は影響を受けない。むしろ強化される。 --- **改訂履歴** - v0.1(2026-08-10): 初版起草。較正18サンプル(一致17)。所長承認前。 *本仕様はAI MQL合同会社 為替介入研究所による研究基盤文書であり、特定の金融商品の売買を推奨するものではない。*