# N-008 v1.1 — 判定結果: 事前登録したテストは頑健性を欠き、採用できなかった 為替介入研究所 | v1.1: 2026-08-25 | 状態: 判定完了(**否定的結果**) 正本の事前登録: `n-008.md` v1.0(SHA-256 `ac5b5b9ff60d5362aeaa7f0826ae595f4ce0bcb42b958baed3046927e6623f2f`・2026-08-22凍結・OpenTimestamps ブロック963751で確定) > **v1.0は刻印対象のためバイト不変で保存する。** 本稿はその判定結果を報告する別文書である。 > 判定は凍結済みスクリプト `n008_compute.py`(SHA-256 cf79f040…・同ブロックで確定)を**一切改変せず**適用した。 --- ## 一 結論 **事前登録した指標PRT50は、P1の定義に対して頑健でなく、採用できない。** N-008 v1.0 §3.3は「両定義で結論(型分類)が変わる場合、その旨を明記し、いずれか一方を採用しない」と定めていた。実際に適用したところ、**6エピソード中5件で型分類が反転した**。したがって規定どおり、いずれの定義も採用しない。 中心命題「価格の変位と投機ポジションの変位は同じ速度で減衰するか」は、**この指標では検証できなかった**。仮説が否定されたのではなく、**測定器が機能しなかった**。 ## 二 適用結果〔FACT〕 CFTC Legacy年次アーカイブ(Japanese Yen・コード097741・Futures Only)242週を取得。既知4値(2026-07-28 −163,412 / 08-04 −45,473 / 08-11 −42,085 / 08-18 −52,893)で検算一致を確認したうえで適用した。 **主定義(窓=4)** | Ep | P0 | P1 | ΔP | 50%線 | PRT50 | 暦日 | R% | 価格HL | 型 | |---|---|---|---|---|---|---|---|---|---| | E1 | −81,280 | −94,336 | −13,056 | −87,808 | 未到達(>0週) | — | 0.0% | 1 | D | | E2 | −94,336 | −65,842 | +28,494 | −80,089 | 27週 | 211 | 400.4% | 5 | A | | E3 | −179,919 | −126,182 | +53,737 | −153,050 | 2週 | 27 | 103.9% | 15 | C | | E4 | −182,033 | −11,354 | +170,679 | −96,694 | 90週 | 655 | 53.1% | 431 | A | | E5 | −102,059 | −129,567 | −27,508 | −115,813 | 未到達(>8週) | — | −123.0% | 5 | D | | E6 | −163,412 | −42,085 | +121,327 | −102,748 | 未到達(>1週) | — | 8.9% | 8 | D | **感度分析(窓=1)** | Ep | ΔP | PRT50 | 暦日 | R% | 型 | |---|---|---|---|---|---| | E1 | −1,276 | 1週 | 12 | −923.2% | A | | E2 | −8,282 | 1週 | 8 | −933.4% | C | | E3 | +44,997 | 7週 | 55 | 104.7% | A | | E4 | +30,961 | 未到達(>93週) | — | −158.3% | D | | E5 | +26,957 | 1週 | 13 | 327.6% | C | | E6 | +117,939 | 未到達(>2週) | — | 6.3% | D | **型分類の一致は 1/6(E6のみ)。** | Ep | 窓4 | 窓1 | 一致 | |---|---|---|---| | E1 | D | A | 不一致 | | E2 | A | C | 不一致 | | E3 | C | A | 不一致 | | **E4** | **A(655日)** | **D(打ち切り)** | 不一致 | | E5 | D | C | 不一致 | | E6 | D | D | 一致 | ## 三 なぜ失敗したか ### 3.1 凍結規則の構造的欠陥〔FACT〕 P1の探索窓を「**最終**介入日以降」に置いたため、エピソードが複数のCOT週にまたがる場合、**初期の介入日が生んだ変位を捉えた観測が体系的に除外される。** E5が典型である。介入は4/30・5/4・5/6の3日。2026-05-05のCOTは4/30と5/4の効果を捉えて **−102,059 → −61,738(+40,321のスクイーズ)** を示しているが、最終介入日5/6より前であるためP1候補から外れる。規則上の最初のpost観測は5/12(−75,102)となり、以降は再ショート化の局面だけを見ることになる。結果としてΔPの符号が反転した。 同型の除外はE3(2024-04-30が該当)でも生じている。E1・E2・E4・E6は介入期間中にCOT基準日がないため影響を受けない。 ### 3.2 ΔPが小さいときRが発散する〔FACT〕 R = (P−P1)/(P0−P1) は分母が小さいと発散する。窓1のE1(ΔP=−1,276)で−923.2%、E2(−8,282)で−933.4%となり、指標として意味を持たない。**事前登録時にΔPの下限を設けていなかったことが設計上の不備である。** ### 3.3 そもそも変位が生じないエピソードがある〔FACT・独立した観測として重要〕 **E1(2022年9月22日・24年ぶりの円買い介入)に対し、CME投機筋のネットショートはほとんど動かなかった。** 直前 −81,280(9/20)、直後 −82,556(9/27)。介入期間中にCOT基準日がないため、これは規則の副作用ではなく実測である。 これはE6(+121,327のスクイーズ)と対照的で、**同じ円買い介入でもCME投機筋の反応は一様ではない**ことを示す。ただしn=1の記述であり、原因(規模、意外性、当時のポジション水準)は識別できない。 ## 四 この結果から言えること・言えないこと **言えること** - 事前登録した指標PRT50は、P1定義に対して頑健でない〔FACT〕 - E1では介入に対しCME投機筋のネットショートがほぼ動かなかった〔FACT〕 - E6では大きなスクイーズが生じ、8/18時点で6.3〜8.9%しか戻っていない〔FACT・両定義で一致〕 **言えないこと** - 「価格効果とポジション効果の減衰速度が異なる」という中心命題の当否。**測定できていない** - E4がType AかDか。定義により反転する - 型分類に基づく一般化のすべて ## 五 規則を直して再計算しない 三で特定した欠陥は修正可能である。しかし**本稿では修正しない。** 結果を見てから規則を変えて再計算すれば、事前登録の意味が失われる(会則第19条)。 修正版を用いる場合は、**新規の事前登録として凍結し、次エピソード以降に適用する**。E1〜E6に遡及適用した結果を示す場合は、確証ではなく**探索的分析**として明示する。 ## 六 公開データ - `data/n008_cot_jpy_net.csv` — CFTC Legacy 非商業ネット 242週(2022-01-04〜2026-08-18)SHA-256 `09eaf345957da90b122c777a4878c26579207f77bbdb4415eb84c853e6a90d9a` - `data/n008_episodes.csv` — エピソード定義と価格半減期 SHA-256 `68f2271a1edd5b398fe4c9ecc976d06daf9cc358384b49d4cba5aee98e044246` - 判定に用いたスクリプト: `docs/n008_compute.py`(v1.0と同一・改変なし) 第三者は上記2ファイルと凍結済みスクリプトで、本稿の表を完全に再現できる。 ## 七 版履歴 - **v1.1(2026-08-25)**: 判定結果を公開。頑健性の失敗により指標を採用しない。v1.0はバイト不変で保存 - v1.0(2026-08-22): 事前登録の凍結。OpenTimestamps ブロック963751で確定